2023年2月に行われた桐朋中学校の入学試験問題について研究しました。今回はその一回目です。
●2023年の入学試験概況と国語の配点
桐朋中学校の国語の入試問題研究を行います。
本校は2回、入試を行っており、ホームページによると第1回が380名、第2回が597名で、合計977名だったそうです。また、両回ともに出願した受験者数は234名ということです
配点は国語、算数がそれぞれ100点満点で理科、社会が60点満点になります。国語は算数とともに合否に大きく影響する教科です。試験時間は50分です。
●1回目、2回目の問題構成は共通している
長文読解問題が2題という構成は変わらないですが、2023年の長文の種類は1回目、2回目ともに1題が小説、もう一題が随筆です。特徴的なのは例年、小説や物語、随筆からの出題が多いことです。登場人物の心情を問う問題が多く見受けられます。また、記述問題も多く含まれますので、豊かな表現力が必要となります。詳しくはそれぞれの回ごとに見ていきましょう。
●表現力が問われます
大問の1の出典は、浅野竜の小説「シャンシャン、夏だより」からです。
問二、問三が選択肢の中からふさわしいものを選ばせる問題ですが、紛らわしい選択肢はありません。
問四から問六が説明を書かせる問題です。特に問四の問題文には「詳しく説明しなさい。」とあり、解答用紙で割り当てられているスペースも大きいです。出題者は登場人物「二人の置かれている状況」を詳しく説明できる表現力を判定したいのでしょう。こういった問題は採点が非常に難しく、出題を避ける傾向があります。大学入試問題を作問した経験があるわたしからすると、どういった基準で採点したのか気になるところです。よく用いられるのは、解答の中に何々という語句が含まれている場合には何点という採点基準を設ける方法です。問六の場合、キーワードが「ツユクサの葉」であることは間違いないですが、問四や問五の場合、受験生はいろいろな書き方をします。
わたしだったら、問四には「自分は父の転勤にともなって、何回も転校しなければならなかったので、どこが故郷かさえわからなくなる。今、住んでいるところにしてもいつかは出て行く。それに比べて、ずっと同じ町で暮らせるノブトには今の生活を大事にしてほしかった。」と答えるでしょうか。
問五の「それ」はセミの脱皮があと少しで終わると思ったことです。実際は、その後さらに足が固くなるのを待ち、羽がまっすぐにのび、セミらしい形になるにはだいぶ時間がかかることを知ったと書けばいいのです。
文章を書き慣れていないとかなり手こずるでしょう。
●心情を問う問題に対しては感情移入せずに冷静に判断する
大問の二の出典は、川上弘美の「溶けてゆく淡雪のように」からです。
漢字、文学史、適語選択などさまざまな形式の問題が出題されています。
問五は「わたし」の心情を問う問題です。選択肢の中には紛らわしいものがあります。本文で書かれていることのみに集中して、感情移入を避け、ふさわしいものにしぼっていくことで正答にたどり着きます。時間がきても全員がなかなか集まらないことに、「わたし」がとまどっている様子はうかがわれても、いらだっていることまでは描かれていません。さらに、Yさんからもらったチョコレートを口にしますが、心がなごんだかどうかまでは知るよしもありません。心情を問う問題で選択肢から適切な答えを選ぶ際には冷静な判断が必要になります。
問三と問九が説明を求める問題です。
問三について、「はじめての街はいつも、最初は遠い」の意味を問われています。物理的な距離ではなく、気持ちに距離があるのだということは理解できても、どう書き表したらいいのかわからない受験生が多いのではないでしょうか。初めて来た街では環境や慣習の違いからとまどうことが多く、受け入れられるようになるまでは時間がかかるというような内容を書けばいいのです。
問九はさらに「書く力」が求められます。筆者が十年前の滞在のことをいま文章に書いたのはどのような思いがあったか説明しなければなりません。極寒の地であり、ボルシチが出てくるところから、ロシアかウクライナの街であることは読み取れます。わたしでしたら「俳句を通して知りあった人々と交流する中で、お互いに親しみを感じ、理解を深めることが出来たが、戦争によって遠い街になってしまったことに取り返しのつかない思いを抱き、耐えられないほどの哀しみに囚われている。」と答えたいです。
本文に書かれていることの詳しい説明をすることを求められた場合に必要となるのは表現力です。もちろん、本を読み、感想文を書くことで読解力を身につけ、表現力を養うことが出来ます。また、表現力は教師、家族、友人との会話によっても磨かれます。積極的な会話を心がけるようにしましょう。
今回は桐朋中学校の国語の1回目の入試問題について見てきました。
次回は2回目の入試問題を研究してみたいと思います。