三鷹には三鷹中等教育学校がありますし、ホームページで2024年度の適性検査問題を公開しているので、三鷹中等教育学校の問題を見ることで都立の中高一貫校の入試について考えてみたいと思います。選抜方法や適性試験の概略をつかんでおかないと、どのような対策が有効か把握できないかと思います。今回はそこを整理します。

 東京には都立の中高一貫校が11校ありますが、中等教育学校と併設型の中高一貫校に分かれます。三鷹中等教育学校は6校ある中等教育学校の1つです。中等教育学校には他にも、小石川、桜修館、立川国際、南多摩があり、都立高校を併設する中高一貫校が白鷗、両国、武蔵、富士、大泉5校です。この併設型の都立中学校も接続している都立高校に進学する場合は高校入試がありません。また、高校で募集はしていません。中等教育学校と同じです。

●報告書の評価

選抜方法は同じ中等教育学校でも学校によって違います。

小学校の報告書の評価が影響することは変わりません。令和6年度三鷹中等教育学校の場合、総合成績は報告書200適性検査800点=合計1000 の成績順で判定されます。報告書の内容は5年生、6年生の2年を3段階の340点、220点、15点で計算しています。 

5年生 9教科×40点満点=360

6年生 9教科×40点満点=360

9教科とは 国語、算数、理科、社会、音楽、図画工作、家庭、体育、外国語 のことです。

報告書は2年間合計の720200点で換算するので、報告書の成績は合計点数に200/720を掛けて算出することになります。

評価方法は変更になる可能性があります。

●適性検査の配点と出題分野

三鷹中等教育学校の適性検査は適性検査Iと適性検査IIがあります。

【適性検査I】   

100点満点を300点で換算

【適性検査II】 

100点満点を500点で換算

この適性検査ですが、東京都立の中高一貫校では、東京都の共同作成問題と、学校で独自に作っている問題を組み合わせています。2024年の三鷹中等教育学校の場合、適性検査IIIの大問1は独自の問題を出題しています。適性検査IIの大問2と3は共同作成問題を利用しています。同じ都立の中高一貫校でも学校によって、共同作成問題の利用度合いが違います。

2024年度の三鷹中等教育学校の適性検査Iは国語分野からの出題で、IIの大問1は算数的分野、大問2は社会的分野、大問3は理科的分野です。適性検査IIについては話しをわかりやすくするために教科ごとに整理しましたが、実際には教科横断型の適性検査なので、複数の教科の学習要素を含んでいます。

●適性検査Iについて

 同校のホームページに、出題方針は「文章を深く読み取り、他者のものの見方や考え方を理解する力、分かりやすく適切に表現する力をみる。」とあります。

2つ文章が掲載されていますが、2つとも小説からの出題です。出典は三浦しをんの「墨のゆらめき」と標野凪の「「こんな日は喫茶ドードーで雨宿り。」です。三浦しをんの「墨のゆらめき」からは2024年度の海城中学の入試問題でも出題されています。書道教室を舞台にした話しで、中学受験生にもなじみやすい題材ということなのでしょう。

問題は3題で、[問題1]は「墨のゆらめき」に対する問題で、[問題2]は「こんな日は喫茶ドードーで雨宿り。」に対する問題、[問題3]は両方の文章の内容を踏まえて具体例を挙げて説明させる問題です。

[問題1]は登場人物が文中の該当箇所のように感じた理由を説明させる問題です。本文の流れから生徒たちの気持ちを読み取って答えます。35字以上45字以内という指定があります。

[問題2]はなぜ商品に「自身が持てるあんバタートースト」という名前をつけたのか、店主の意図を想像して答えます。「(   )というメッセージをお客さんに伝えるため。」の(   )にあてはまるように、60字以上70字以内で書かなければなりません。

[問題3]は人が自信をもって生きていくために周囲の人とどのような関わりを持つことが必要と考えるか書かせる問題です。2つの出題文の内容をふまえた上で、具体例を挙げて説明しなければなりません。360字以上400字以内で自分の考えを書くということですから作文です。「こんな日は喫茶ドードーで雨宿り。」のほうには、文中に自信を持つということについて具体的な記述があります。また、「墨のゆらめき」には子どもたちの「誇らしげで楽しそうな表情」という表現があります。やはり人から褒められたり、温かい目で見守ってもらえていると実感できたりすると自信がつくものです。

[問題1]と[問題2]は三鷹中等教育学校のホームページに解答例が載っています。[問題3]は作文ですのでここで解答の解説はしません。

●適性検査IIについて

出題方針は、「資料から情報を読み取り、課題に対して思考・判断する力、論理的に考察・処理する力、的確に表現する力などをみる。」とあります。

先述した通り、大問1の算数的分野のみ三鷹中等教育学校の独自問題で、大問2の社会的分野と大問3の理科的分野は共同作成問題です。

適性問題IIはすべてホームページに解答例が掲載されています。

大問1の[問題1]は速さを求め、条件を満たすような「時刻と位置の関係」を表したグラフを完成させる問題です。図やグラフと関連付けながら的確に読み取る力が求められるだけでなく、このように読み取った情報を使って、図やグラフを書く作業をさせるような問題が増えています。三鷹中等教育学校だけでなく全体的な入試問題の傾向です。

[問題2]は円周率を使って解く問題です。問題文で指定されている資料3が複雑です。この資料が正しく読み取れれば、それほど悩まず答えられるでしょう。

[問題3]は手のかかる問題です。学校行事のウォーキングイベントに参加した3つのチームの順位を決める方法についての問題です。設問には2つの案があり、まずはそれぞれの案に基づいて表に数値を入れ完成させます。表の完成には速さを求める必要のある案があります。

大問2は社会的分野です。

[問題1]は公共交通機関の選び方についての問題です。図と表が1つずつ提示されているので、そこから読み取れることに判断を加えて、どうしてその交通機関が選ばれるのか論理的に説明します。

[問題2]は「ふれあいタクシー」の取り組みと導入効果についてです。この問題については図と表が2つずつ提示されています。複数の図や表から読み取れる情報を整理して適切に解釈する力が求められます。これも三鷹中等教育学校だけでなく、最近増えている傾向の問題です。導入効果については、図2と表3の関係性に気がつけば難しくはありません。どう書き表せばいいのか表現力が問われます。

大問3は理科的分野でまさつの問題です。小問が2問ありますが、2問とも計算を必要としません。

[問題1]は実生活に結びついた問題で、ペットボトルのキャップに施された工夫を取り上げています。実験1に示された1~9まである手順を正しく理解できれば手間取る問題ではないのです。解答に必要な要素に抜けがないかがポイントになります。問題文に「手でつかむ力が大きいときでも小さいときでも……すべりにくくなる理由を説明しなさい」とあることに注意が必要です。

[問題2]は材質の違いによるすべりやすさの変化です。この問題は実験2と実験3の2つの実験から考察を加えます。実験2の結果は表2にまとまられていて、実験3は表3にまとめられています。この2つの表を関連づけることができれば、表3のA、B、Cを埋めることは容易です。後は問題で求められていることに応じて理由の説明が適切に行えるかです。「実験2では同じでなかった条件のうち実験3では同じにした条件は何であるかを示して」という条件に即して答えます。実験2では材質によって異なる重さが、実験3では3枚重ねることによって同じになっています。

●表現力、論理的思考力が重要

 適性検査IとIIの出題方針はすでに記しましたが、三鷹中等教育学校の適性検査全体の基本方針は以下のようになっています。

(1) 社会的リーダーとして必要な、他者の心情を理解する力、自分の考えを効果的に伝える力をみる。

(2) 課題や資料の内容を正しく分析する力、論理的な思考力・判断力及び問題を解決していく力をみる。

(三鷹中等教育学校のホームページより)

「国語」では小説や物語を題材にした問題で筆者や登場人物の心情を問うことが多いです。自分の考えを効果的に伝える訓練は「国語」で積み重ねてきています。論理的な思考力を育むことこそがまさしくわたしたちの授業で行っていることです。互いの立場や考えを尊重し、言語を通して正確に理解し、適切に表現するすべを身につけるのが国語という教科です。すべての教科の基本となる素養と言えるでしょう。

三鷹中等教育学校の適性検査Iは作文も含め、国語の試験と同じですが、適性検査IIについても国語力が問われます。大問1の数学的な分野は長文で出題されており、条件もかなり細かく設定されているので、読み解く力が必要とされます。大問2の社会的問題と大問3の理科的問題については、問題を解くことよりも考察したことをどう伝えるかの方が苦労するはずです。大問2も3も考えたことを文章で伝える訓練をしておかないと対応が難しいはずです。そしてその訓練を最も積みやすいのが国語です。

学習指導要領の大きな柱になっているのが思考力、判断力、表現力を養うことです。三鷹中等教育学校の出題方針はその考え方を尊重したものになっています。来年から新しい指導要領で教育を受けてきた生徒が大学を受験します。大学だけでなく高校入試や中学入試でも同傾向の出題がますます増えていくと予想されます。

間違いなく国語が決め手になるのです。