前回に引き続き今回は、2024年2月3日に行われた明治大学付属明治中学校の2回目の国語の入学試験問題について研究しました。
●大事な部分には線を引く
1回目の試験同様、長文問題は1題だけですが、かなりの長文で約10,600字の分量があります。
大問一は山際寿一の「スマホを捨てたい子どもたち」からです。
問一は本文中の傍線①に「このギャップの大きさ」とありますが、ギャップの大きさが生まれる原因を筆者はどう考えているかという問題です。
その答えは傍線①からかなり離れたところにそのものずばり書いてあります。傍線②も③も通り越して、「一方で、人間の脳は大きくなっていません」で始まる段落にあります。
「人間が安定的な信頼関係を保てる集団のサイズ、信頼できる仲間の数は150人規模のままだということです。テクノロジーが発達して、見知らぬ大勢の人たちとつながれるようになった人間は、そのことに気づかず、AIを駆使すればどんどん集団規模は拡大できるという幻想に取り憑かれている。こうした誤解や幻想が、意識のギャップや不安を生んでいるのではないか。僕はそう考えています。」字数制限はありませんが、解答用紙に用意されているスペースは3行程度なので、この部分をまとめて解答を作ります。
長文読解問題はすべてそうですが、明大明治中学の試験問題のように出題文が非常に長い場合は特に、最初に出題文を読むときに大事な部分に線を引いておくことが大切です。最初に文章の流れをだいたい掴んでおかないと、小問ごとに違う観点で読むことになって、時間がかかるだけでなく、求められていることと解答がずれてしまう可能性があります。
問二は傍線②に「いくつかの特徴を発達させた」とあるが、どのようなことを指しているかすべて答えるよう求められます。これは簡単です。同じ段落とその次の段落以降に出てきていて、その特徴中心に話が展開しています。集団の規模を大きくすることと脳が大きくなったことです。
問三は空欄1、2にあてはまる説明を文中の語句を使って答えます。これも文頭に箇条書きで示されているので簡単です。1が①にある「おしゃべりをする友だち」で2が②にある「年賀状やSNS、メールで年始の挨拶を発信しようと思うとき、リストに頼らず、頭に浮かぶ人」です。
問四は傍線③に「『150』という数字は、実に面白い数字である」とあるがどのような点を筆者は面白いと考えているか記述して答えます。答えは次の段落とさらにその次の段落に含まれています。「食料生産、つまり農耕牧畜を始めるまえまで、人間は、この150人くらいの規模の集団で狩猟採集生活を送っていました」とあり、「そして、現代でも、このような食料生産をしない狩猟採集民の暮らしをしている村の平均サイズが、実に150人程度なのです」とあります。さらに、「言い換えれば、150人というのは昔も今も、人間が安定的な関係を保てる人数の上限だということです」とあります。この言い換えている部分を使って解答を作ります。
問五は空欄のAに入る4字熟語を選択肢の中から選びます。すぐ特定できるはずです。
問六は傍線④⑤⑥の指示内容を記述して答えます。3つとも指示語を含んでいますので、指示内容は直前にあります。
④の「そのつながり」は前の段落に「時を共有して同調することであり、信頼はそこからしか生まれません」とありますので、この部分を使って解答を作ります。
⑤の「こうした継続的な同調作業」は直前の「同じような服を着たり、同じテーブルを囲んで食事をしたり、同じような歌を歌ったり、同じような作法を共有したりといった、身体を同調させる仕掛けが埋め込まれています」という部分を指しています。
⑥の「こうした日々の活動」は同じ段落の「日々、お互いの存在を感じ合うことで、仲間として認識するということです。挨拶を欠かさないのもその一つ。ニホンザルであれば、親しいもの同士、グルーミングをする。」のことをいっています。
問七は脱文挿入問題です。内容から判断してどこに挿入するのがふさわしいか考えるしかないのですが、何しろ出題文が長いので厄介です。問七で提示されている挿入するほうの文章は、「しかし、ICTやAIは、個人を拡張する方向に進んでいて、異なるもの同士がつながり合って新しいことを生み出すことを目指していないように思います」という文で始まります。したがって、その前の段落は、個人を拡張するのではなく、異なるもの同士がつながり合うことを目指しているというような内容になっているはずです。
この問題で時間をかけ過ぎずに解けるかどうかのキーワードは「拡張」という言葉です。「個人を拡張する」という表現はあまり使わないので、一読して記憶に留める人もいるはずです。「拡張」という言葉を使っているところは1箇所しかなくて、「自分だけを拡張していけばいいからです」で終わる段落です。この段落を見てみると「人間は『たがいに違う』ことを前提に、違うからこそお互いに協力し、異なる能力を合わせながら、一人一人の力ではなし得ないことを実現してきました。そのために、人間は他者とのつながりを拡大するように進化してきたわけです。」とあります。内容的にもつながりますので、この後に入るのがよいでしょう。
問八はB~Dの3つの空欄に入る接続詞を選択肢の中から選びます。よく読めば選択肢の中から選びだすのはそう難しくはありません。
問九はE~Hの4つの空欄に「自分」か「他者」のどちらかを入れるという問題です。この問題は内容についてあまり深く考えなくても、どちらかをあてはめてみることで、文章的に不自然ではないか検証することで解答を得られます。
問十は傍線⑦の「二つの学問」が指すものを答えます。この問題は簡単です。直後に「20世紀、哲学は生物学にその地位を譲り渡しました」とありますので、一つは「生物学」です。その段落と次の段落で生物学について語った後、「こうして哲学を乗っ取った生物学は、やがて情報学に乗っ取られます」から始まる段落が出てきます。したがって、もう一つの答えは「情報学」です。
問十一は傍線⑧に「生物学を乗っ取った情報学は、人間を知識偏重に変えました」とありますが、その結果、人間関係においてどのようなことが問題になると筆者は考えているか記述して答えます。この問題は何を求められているのかを正確に読み取る必要があります。設問の文に筆者は人間関係においてどのようなことが問題になると考えているかと書かれていることが重要です。人間がどう変わっていったか傍線⑧以降で筆者の説明は続きますが、その中でも特に人間関係において問題になることが書かれている部分を参照します。すると、2段落後に具体的に書かれている箇所が見つかります。
「相手を『理解』するのではなく、ただ『了解』することが、互いの信頼関係を育んだり、好きになったりする架け橋になるということがわからない」ために、「その不安が、身近な人への過度なこだわりや要求となり、それがいじめや嫉妬、暴力につながっている」というのが答えになります。
問十二はIとJの二つの空欄にあてはまる言葉を選択肢から選びます。選択肢は4つだけなので選び出すのは難しくないと思われます。
問十三は傍線⑨に「ICTのネットワークには中心がありません」とありますが、その結果起きる問題を答えます。どのような問題が起きるかについては、次の段落に書かれています。「中心がないからリーダーができずに意見を集約できず、すぐに炎上するという欠点にもなります」という文や「他者とつながっている感覚も失われていきます」という文が具体的です。これらをまとめて解答を作りましょう。
問十四は空欄Kにあてはまることわざを選択肢から選びます。選択肢として挙げられているのはどれも知っていて欲しいことわざですし、それぞれ意味が異なりますので迷うことはないと思います。
問十五は空欄Lにあてはまる言葉を漢字二字で文中から抜き出します。空欄Lは3か所で出てくるのですが、そのうち2つは空欄に続く言葉が「のつながり」となっていて、残り一つは「がつなぎ合わされている感覚」となっています。「信頼」でもよさそうに思うのですが、「信頼」であれば「信頼関係」とすればよさそうなものです。出題文をもっとずっと遡っていくと、「のつながり」で表現されていく言葉がありました。「身体」です。この長文をどれだけ読みこなしているかが問われる問題です。
問十六は全文の100字要約です。
筆者は最後の段落と後ろから2番目の段落でこの文章をまとめています。
すなわち
「付き合う人数を増加させるというICTの進化の方向は、人類の進化と同じです。」
「人間が共感によってつながる人の数には限界がある」
「ぼくたちは、コミュニティの規模に応じて、適切なコミュニケーションツールやルールを使い分けなくてはいけません。本当に信頼できる人とのつながりをつくるには、時間と空間を共有し、五感を使った付き合いをする必要があります。」
「大事なのは、人間は『生物として』進化してきたことを自覚し、生物としての人間の幸福な在り方、生き方を考え、現代文明と付き合っていくことです。」
これらの文を100字にまとめて解答を作ります。
大問二は漢字の書き取りで、10題あります。
●読解力が必要
長文問題に設けられた小問の数は16題で、そのうち選択肢が用意されているものは5題です。その他の11題のうち、1題は脱文挿入問題ですが、残り10題が記述解答を求められる問題です。1回目の試験問題と同様に文章表現力が問われます。
同時に読解力が問われていることを強く感じます。 特に問七、問十一、問十五などは内容をよく理解していないと正しい答えを導き出せません。
1回目の入試問題のときにも書きましたが、学校は読解力と表現力を見ています。日頃から論理的な文章を読んで内容を理解できるよう訓練を積みましょう。