2024年2月に行われた調布にある明治大学付属明治中学校の国語の入学試験問題について研究しました。入学試験は2回行われますが、今回は2月2日に行われた1回目の試験から見ていきます。
●学校情報
明治大学の付属校には2通りあって、明治大学直系の付属校と経営母体が異なる系列校にわかれます。付属校は明治大学明治中学・高等学校だけで、系列校は明治大学中野中学・高等学校と明治大学八王子中学・高等学校の2校です。なお、八王子中学・高等学校は、昨年度まで明治大学中野八王子中学・高等学校という名前でしたが、今年の4月から校名を変更して「明治大学八王子中学・高等学校」になっています。
中学から高校への進学ですが、ホームページには以下のように書いてあります。
「中学から高校への推薦には、中学3年の2学期末までの成績において、全ての教科で40点以上、主要5教科(国社数理英)平均が55点以上であることに加え、英検準2級(1次試験)以上に合格していることが必要です。毎年ほとんどの生徒が明治高等学校に進学しています。
明治大学付属明治中学校のホームページより
中野中学・高等学校のホームページの「よくあるご質問」コーナーに掲載している「併設中学から高校へ進学する際の基準は?」という質問には以下のような学校の回答があります。
「学習上・出席上・生活上の進学基準があります。きちんと出席して授業や定期試験を受け、課題をこなしていればクリアすることは難しくありません。」
明治大学付属中野中学校のホームページより
八王子中学・高等学校のホームページで中学から高校への進学についての情報を見つけることは出来ませんでした。
2023年度卒業生の高校から明治大学への進学ですが、明大明治は85.7%が明治大学に進み、13.9%が他大学へ行っています。明大中野は79.3%が明治大学へ進学、14.1%が他大学です。明大八王子は89.1%が明治大学で、8.6%が他大学です。明大中野では卒業後、進学準備という道を選んでいる人が25名いるのが特徴的です。付属校と系列校では経営母体が違っても明治大学への内部進学にあまり差はないようです。
2024年度の1回目入試の受験者数558人で、合格者数は190人ですから、実質倍率は2.94倍です。これが2回目入試になると受験者数346人で、合格者数89人ですから、実質倍率は3.89倍にまで跳ね上がります。明大明治を目指す受験生は1回目入試を受ける方が断然有利です。
●表現力が問われます
今回は1回目の問題を見ていきたいと思います。
長文問題は1題だけですが、かなりの長文で毎年10,000字程度の分量の文章が出ています。2024年度も同様です。
大問一は沢田允茂の「考え方の論理」からです。過去5年間、小説からのは出題はありません。
問一は空欄補充問題で、空欄に当てはまる言葉を2字で答えます。犬に中には「ブルドッグ、ドーベルマン、チン、シェパードなど、そのほかたくさんのたくさんの違った」に続きますので、犬種、「種類」のことだとわかります。
問二は空欄2と空欄3 の2か所の空欄補充ですが、17字以内で答えるよう指示があります。犬は馬のいるところを回っているには違いないのですが、馬が一緒に回ってしまっているので馬のまわりは回っていないということをどのように表現するかです。表現力が問われます。
問三は空欄4にあてはまる内容を選択肢から選びます。選択肢は4つあり、すべて推論です。空欄の前後は、「誰が考えても・・・・・ということには、なんのあいまいさもありません。」となっていますので、正しい推論を選べばよいことに気づくでしょう。イ、ウ、エが間違っていて、アだけが正しいです。
問四は傍線①に「語の意味のあいまいさをなくすことは、たいへんむずかしい」とあるが、その理由を筆者はどのように説明しているか100字以内で書くという問題です。傍線①の2つ後の段落にある「私たちのものの感じ方や気分を表すことばは、それぞれの国の伝統や社会のあり方に深いつながりを持っていますから、世界じゅうが一つの文化、一つの社会にならなければ、共通のものは求められないということになります。」という部分がそのまま結論として使えます。ただ、このままでは始まりが唐突すぎるかもしれないので、導入部は傍線①の直後にある「あいまいさをなくすためには、世界じゅうにあるものや、できごとの一つ一つにちがった名まえをつけ・・・・・ということが必要でしょう。」という部分から抜粋してはどうでしょうか。
問五は傍線②、④、⑦の指示語が指し示す内容を書きます。しかも文中からという指定はありません。
傍線②の「これ」はほかの国のことを言っているので、直前の「英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語では、自分のことを呼ぶのに一種類の語しか使わないこと。」を示しています。傍線②で始まる文が否定的な内容を含む言葉で終わっているので、よく読まないと逆に日本語のことを言っているものと勘違いしそうです。
傍線④の「これ」は簡単です。「これは二つの意味で間違いです。」とありますので、筆者が間違っていると考えていることです。直前に「私たちが使う語のさすものが、じっさいの世界の中にもあるのだと考えるのは、間違いだということです。」とあるのでこの部分を指しているのは明らかです。
傍線⑦の「そういうこと」は直前にある内容を指し示していますから、直前の文をチェックします。すると、そこに筆者のいいたいことがわかりやすく書かれています。すなわち、「あいまいな議論をやめて、もっとはっきりした問題をつかまえて、一歩一歩すすんでいくべきじゃないでしょうか。」という文です。
問六は傍線③の「色眼鏡」の意味を選択肢から選びます。負の意味を持っているのはウの先入観だけなのですぐわかると思います。
問七は図を読み取って出題文の空欄を埋める言葉を4字以内で答える問題です。5~9の5つの空欄があります。空欄5、6、7が白い丸、黒い丸、黒い三角であることは一目瞭然です。8 の2つは形が丸いことが共通していて、9 の2つは色が黒いことが共通しています。
問八の空欄10はチルチルとミチルの話の流れですから、「青い鳥」以外にありません。
問九は傍線⑥の「ただ遠くへ旅行すると同じようなものの考え方をしてしまう」とはどのようなことを意味しているか説明します。この傍線⑥はその前の「真理や美や善をさがすのに、じっさいに遠くまで旅行するのではありません。」という文からつながっています。真理や美や善がわたしたちの外にあると思ってしまうから遠くをさがしてしまうということを意味しています。
問十は空欄11にあてはまる内容を考えて書きます。空欄11を含む段落は「目的」とは何かということについて書かれています。その中で大学入試の面接で面接官の先生から聞かれることですから、当然、「あなたの大学へ入る目的はなんですか。」、あるいは「大学で何を学びたいですか。」ではないでしょうか。
問十一は文中のAからDの段落を適切な順番に並べ替えるという問題です。この4つの段落に入る前の段落は、「私たちが使っている語の意味(概念と言うことと同じです。)を、はっきりさせることも必要です。」で終わっています。これに内容的につながるのはDしかなさそうです。他の段落はどれもスムーズにつながりません。また、Cの段落は「ほんとうの気持ちを、美しいことばづかいなどすてて、できるだけそのとおり表してみるのです。」で終わっています。これはAの出だし「こうして、自分の気持ちを前のことばとはべつのことばで言いなおしてみると…」につながります。そこで、残っているBをどこに置くか見てみます。すると、A~D の段落の後に続く文章が、「これにたいして、ふだんのことばで書かれたつぎのような文章、…」 で始まっています。これはBの段落の後ろから5行目から4行目にかけての文、「じっさいに使われていることばでなくて、あまり親しみのない記号で書かれています。」につながります。DとCのつながり、AとBのつながりについては、改めては説明しませんが同様のやり方で確認できます。解答はD →C →A →B です。
問十二は空欄12から空欄14までにあてはまる言葉を選択肢から選びます。空欄12と13はどちらにもアの「抽象的」が入りそうに思えて少し迷います。しかし、12には他のどの選択肢の語も入らないので、12をアとして、比喩が使われている後ろの哲学者の文章について言っている13にエの「比喩的」をあてはめます。14はウの「気分的」が入るのが順当でしょう。
問十三は空欄15にあてはまる言葉を書きます。15はその前に出てくる二人の主張の両方に含まれていなくてはならないので候補は限られます。しかも「かならず、ひとりでにつぎのようなことが言われる」という意味だとすると、一つしかありません。「だから」です。ここで接続詞が答えになると思わなかった受験生は意表を突かれたことでしょう。
問十四は出題文における筆者の主張を100字以内でまとめるという課題です。この文章は入試問題としては長文ですが、そのほとんどの部分で語のあいまいさについて語っています。すなわち、語の意味をはっきりさせることによって、あいまいな議論をやめて一歩一歩進んでいくべきだと主張しています。そして、もっとも大事なことはすべて後ろから2番目の段落に集中的に書かれています。「ことばの意味の正しい理解のためには、いろいろな多くの経験にぶつかり、それを偏見なしにみつめて、どういうことばでそれを表現したらいいか、ということを十分に考えてみることが必要です。」という部分です。さらに、「少しでも正しい理くつを言おうとする気持ちがあれば、かならず正しい理くつが生まれてきます。」という部分を使って解答を補います
大問二は漢字の書き取りで、10題あります。
●100字要約の訓練で対策を!
長文問題に設けられた小問の数は14題で、そのうち選択肢が用意されているものは4題だけです。その他の10題のうち、1題は段落の並べ替えですが、残り9題が記述解答を求められる問題です。しかも単純に本文から抜き出せばいいというものは稀で、自分の言葉で答えるものがほとんどです。文章表現力がないととても太刀打ちできません。
当校のホームページには出題方針が掲載されていますが、そこにも表現力を見ると書いてあります。
「 国語では読解力や表現力を見る作問を行っています。例年、説明文を中心にした長文問題を出題しています。長文問題では速読速解の力が求められていますので、文章に読み慣れておく必要があります。また、これらの問題では読解力を見るだけでなく、要旨・主題・説明などを記述の形式で答えてもらい、表現力も見ています。文中のキーワードに注意して、自分の言葉を加えながら的確にまとめることが求められます。字数制限のある問題では、句読点も字数に含み、制限字数の8割以上は書くようにしてください。問題文をよく読み、『何をきかれているのか』をよく考えて答えてください。部分点も見ていますが、ピントがずれていると得点にはなりません。」
明治大学付属明治中学校のホームページより
この出題方針に書かれていることは、明大明治中学校受験者だけでなく、どの学校を受ける受験生にも共通して求められる能力であり、注意事項です。部分点も見ると書いてありますし、自分の言葉で解答を書かせる問題は採点が難しいです。出題者側からすれば負担が大きいでしょうが、採点の困難さより受験生の本当の力を見たいという思いが強かったのでしょう。
文章表現力を磨くということは簡単ではないので、できるだけ早くから対策を立てておくことをお勧めします。わたしのところでも100字要約は授業として必ず行いますし、成果が上がるまで続けます。効率よく力をつけるにはやはり専門家に添削指導をしてもらう方が早いですし、着実です。
次回は明大明治中学校の2回目の国語の入試問題を見ていきます。