2025年2月に行われた青山学院中学部の国語の入学試験問題について研究しました。渋谷にある青山学院大学附属の共学校です。

女子に人気のある学校ですが、2025年度では男子の受験者数がぐっと増えています。2024年度入試の実質倍率は、男子が2.9倍で女子が5.0倍でしたが、2025年度には男子が4.0倍で、女子は5.5倍になっています。

青山学院中等部では、キリスト教信仰にもとづく人格教育を重視しています。毎日、全校生徒がHRで礼拝を行います。また、週1時間の聖書の授業ではキリスト教について学びます。

同校を卒業する生徒の95%以上は、青山学院高等部へ進学しています。高等部卒業生の80%以上は、青山学院大学、女子短期大学へ進学しています。

●例年、詩からの出題がある

大問一は漢字書き取り問題です。漢字自体は難しくないですが、出題されている言葉そのものを知らないと書けません。

大問二は吉野弘の詩「奈々子に」からの出題です。

(1)は詩の表現技法を問う問題です。題材に詩を扱っている場合によく出る問題です。設問に「すべて選びなさい」となっているときには答えが複数あると思ってよいでしょう。

(2)は詩の3箇所に空けられた空欄に適語を補充する問題です。選択肢が用意されていて、なおかつどの選択肢にも同じ言葉が使われています。後はふさわしい組み合わせを選ぶだけなのであまり悩まないと思います。

(3)は詩中に「酸っぱい苦労がふえた」とありますが、このことにより<お母さん>の表面上にもたらされた変化を詩中から1行で探すというものです。「酸っぱい」という表現は2連にもあります。そこにお母さんの変化も書かれています。

(4)は設問にこの詩に対する解説が付けられています。解説文には空欄が設けてあり、それを埋める問題です。Ⓕは慣用句で、Ⓖは詩中から漢字2字で書き抜き、Ⓗは自分の言葉で漢字2字で答えます。ⒼとⒽは一つの文中にあって、「 Ⓖ ではなく、・・・・・自分自身を Ⓗ にする心をあげたい」となっています。とすると、Ⓖにはあげられないものが入ることになります。逆に、Ⓗにはあげたいものが入るので、詩中の言葉ですと「自分を愛する心」です。「大事」や「大切」という言葉が入るでしょう。

(5)はこの詩全体について書いた選択肢のうちふさわしいものを選びます。正解の選択肢以外は明らかに違っているので選ぶことはないと思います。この詩が林檎のイメージで統一されていることはすぐ気がつくでしょう。

●何が求められているのかを正しく捉える

大問三は向田邦子のエッセイ「黄色い服」からの出題です。

⑴は傍線Ⓐに「おもんばかり」とありますが、何をおもんばかっているのか選択肢から選びます。直前の「親にしてみれば懲らしめてやれという」から続いているので、イにあるように「灸を据えてやろうと」思ったに違いありません。他の選択肢がまったくあてはまらない内容なので選ぶのは容易です。

(2)は慣用句の問題です。知っていてほしい言葉です。

(3)は「皮切り」という言葉の意味を問う問題です。

(4)は傍線Ⓓに「私はあれで、物の選び方を教わった」とありますが、以前の<私>ならどうしていたと考えられるかという問題です。本文中から八字で書き抜くという指定がついていますので、それをヒントに探します。父の台詞の中にあるので見逃しやすいかもしれません。

(5)には本文の内容をまとめた140字程度の文章がついています。この文章の傍線や空欄について4つの問が設けられています。

①<私>が「頑固な性格」と判断できる根拠を本文中から27字で抜き出して、初めと終わりの三字を書きぬきます。頑固とわがままは違いますが、本文中ではわがままさを表す出来事として表されています。「嫌いな色の手袋だとはめずにいて、しもやけが出来てしまう」という部分です。

②まとめの文章の空欄[Ⅰ]、[Ⅱ]に入る適語を本文中から漢字二字で抜き出します。何の経験からどう選ぶことを学んだのかということを説明する文章を完成させるために言葉を補います。

③まとめの文章に「『ひとつのもの』を選ぶことを学んだ」とありますが、洋服選びにおいてどのようなものか、本文中から二十六字で探し、初めと終わりの三字を書きぬきます。本文中から二十六字で探すと該当するのは、「選んだ以上、どんなことがあっても、取りかえを許さない」という部分しかありません。ただ、これは親目線で書かれたところなので、<私>の立場から書かれたまとめの文章にそぐわない感じがあります。解答がこれでよいのか受験生は迷うかもしれません。

④まとめの文章の空欄Ⓔに入る二字の熟語を自分の言葉で考えて書きます。「ひとつのものを選ぶ」や「決断すること」から「責任」という言葉が思い浮かぶかどうかが試されます。

 ●正しい選択肢を選ぶのにも悩まされる問題も

大問四は石田光規の論説文『「友だち」から自由になる』からの出題です。

(1)は選択肢のうちから本文中の空欄Ⓐにあてはまるものを選びます。空欄Ⓐの前は、友人関係は相手に受け入れてもらうことが重視されるとあります。そして、後は『相手に受け入れられて「よい」友人関係を維持しなければ、つながりから放り出されてしまう可能性がある』となっています。選択肢のイ、ウ、エは本文の内容と違ったことが書かれているので検討に値しません。アの「こちらからはたらきかけなければ置き去りにされてしまうような社会」が正しいです。

(2)は空欄ⒷとⒽに入る接続詞を選択肢から選びます。Ⓑの前は「つながりから放り出されてしまう可能性があるのだ」で、後ろは「何をやれば相手に受け入れてもらえるのか、ということはそう簡単にはわからない」となっています。逆のことを言っているので、逆接の接続詞がくることがわかります。Ⓗの前には「メッセージ性の強いものが中心を占めるようになる」とあり、後ろは『「ふつう」の自己よりも「ちょっと盛った」自己が提示される』とあります。言い換えているので、選択肢の中から選ぶとここには「つまり」が入ります。

(3)は傍線Ⓒに「相手からの承認の度合い」とありますが、これを具体的に説明している部分を本文中から二十九字で探して、初めの五字を書きます。直後の段落に「この承認の度合いを非常にわかりやすい形で可視化したのが、多くのSNSに実装された、人びとの投稿を評価・拡散する機能である。」とあります。「多くのSNS」から「評価・拡散する機能」までが29字になります。

⑷は傍線Ⓓの「掲載されたメッセージを「よい」と思えば、ボタンを操作して、自らの気持ちを伝えること」を本文中で何と書いているかという問題です。中学生はもちろん、最近は小学生でも知っているほど一般的になったSNSの機能です。

⑸は空欄ⒺとⒼに共通して入る語を選択肢の中から選びます。Ⓔの直後には「現在受け入れられている人が、数日後にも受け入れられているとは限らない」とあります。また、Ⓖの直後にも『ある投稿で一万件の「いいね」を獲得したとしても、次の投稿で同じくらいの「いいね」を獲得できる保障はどこにもない。』あります。選択肢の中では「持続性」を選ぶのがよいでしょう。

⑹は空欄Ⓕに入る言葉を本文中から一語で答えます。「一語」とは「一単語」の意味と考えてよいと思われます。空欄の前後は「SNSの承認測定機能は、承認における Ⓕ の問題を解消した。」となっています。これは、⑶で取り上げられた傍線Ⓒとそれに続く部分に「相手からの承認の度合いを徐々に可視化していった。」とあります。この「可視化」がふさわしいといえそうです。

⑺は慣用句の問題です。「拍車をかける」は、知っておきたい言い回しです。

⑻は難しい問題です。答えは選択肢の中では一番当たり障りのない書き方をしているエを選ぶことになります。「ちょっと盛った」という表現を「虚勢」と捉えれば、あながちアも間違ではないように思えるのですが、情報通信ツールの使用を対面交流より重視する風潮があるとは書かれていません。

⑼も難しいです。アには「友人とは常時つながっていられる人であるという定義が明確になる」とありますが、本文には「友人の概念じたいは定義しがたく、曖昧である。」とありますので間違っています。イを検討する必要はありません。ウには『ありのままの自分を見せる必要がある』とありますが、本文には『「ふつう」の自己よりも「ちょっと盛った」自己が提示される』とありますので、違っています。エは本文の冒頭にある文章そのままなので、エが合っているのですが、結論部分とは離れたところにあるので頭から抜け落ちてしまっているかもしれません。

 ●正確に読み取る

大問五は八槻綾介の小説「ややの一本 剣道まっしぐら!」からの出題です。

⑴は傍線Ⓐに「その話を聞いて、あたしはくちびるをきゅっと結んだ」とありますが、それはなぜか選択肢から選びます。この問題も難しいです。本文中の記述から、ややは一香のことを憎んでいて嫌っていることがわかります。そんな一香が前に使っていた防具をなつがつけていると聞いて、不快に思っていることがわかります。傍線③の後に出てくる「一香のなんて使わないで。」という言葉を飲み込んで、くちびるをきゅっと結んだと考えるのが一番ぴったりした理由のように思います。ただ、出題文の範囲を読む限りは、アの「一香の余計なおせっかいだと批判したかったが、なつが自分に同調してくれなさそうで心もとなかったから。」が間違っているとは思えません。「心もとない」という表現がややの性格に合わない感じはいなめませんが…。

⑵は傍線Ⓑの「頭をガツンとなぐられたような気がした」とありますが、ややのどのような心情が読み取れるか選択肢から選びます。傍線Ⓑの後に「一香の立場や気持ちなんて全部無視して、勝手に怒っていた。自分が裏切られて傷ついたからって、一香に当たっていた」などとありますのでウが正しいです。アの「一香がお父さんとの約束を守れずに悩んでいることに気がつかなかった後悔」もあったのだろうとは思いますが、最終的に一香は約束を守って優勝しています。

傍線Ⓒに「一香は、ひとりで剣道をやっている」とありますが、どのような剣道をやっているかの説明が③の設問についています。説明文の空欄①~③を埋める言葉を文中から指定字数で抜き出します。説明文が短いため、あてはまる言葉を類推するのが困難かもしれません。一香がどのような剣道をやっているかについては何カ所かで触れられていていますので探すのに苦労するかもしれません。なつが一香の防具を着てきたときと、真善美道場が火災になった後にややと一香が直接会って話しをする場面で該当する言葉が出てきます。

⑷は傍線Ⓓに「一香は、なつに自分のお想いをたくしたんだよ」とありますが、「自分の想い」とはどのような想いか本文中から十五字で探します。これは、傍線Ⓓの少し後に「それができない一香は、なつにその想いをたくしたにちがいないんだ」とありますので、「それ」が指し示すものが答えになります。

⑸は空欄ⒺとⒻに入る身体に関する言葉を漢字で答えます。この問題は簡単で、「目を丸くした」と「鼻でわらわなかった」です。

⑹は傍線Ⓖに「それに、仲間がいる」とありますが、どのような仲間か本文中から十五字で二つ探します。これも十五字に限定されているので探しやすいです。傍線Ⓖの部分から後は感動を楽しむことと、それには仲間の存在が必要だということが書かれています。どのような仲間かについても書かれている部分を見つけるのは難しくないでしょう。

⑺は提示されている選択肢の中から、本文の内容に合っているものを選びます。この問題は正答以外の選択肢が一読して誤りとわかるので選ぶのに悩むことはありません。

⑻は傍線Ⓗの「一香、はないちもんめしよう」という発言で、ややは一香に対して、これから何をして、どうなることを提案したのか、具体的な内容を自分の言葉で三十字以上、三十五字以内でまとめます。ややが何のことを言っているのかは本文中には具体的には表されていません。また、「はないちもんめ」という遊びを知らないと答えるのはさらに難しく感じるでしょう。2チームに分かれて、相手のメンバーをほしいという遊びですから、一香に自分たちの仲間に加わってほしいという提案でしょう。ただ、はないちもんめは勝ったほうが負けたほうに要求するので、この場合、剣道の強豪校である帝督中学にいる一香を要求できるのか釈然とはしません。わたしは原作を読んだことがありませんが、たぶん原作がそのような展開なのでしょうから如何ともしようがありません。

 ●出題文が長文で問題の量が非常に多い

今回見た青山学院中学部の国語の問題はかなり独特です。

まずは設問の文が他校の入試問題に比べて素っ気ないので、解答として何を求められているのか受験生に正確に伝わるのか心配になります。「素っ気なさ」を感じさせる一つの要因として、設問に使われる言葉の定義が明確ではありません。「語」、「言葉」、「一語」という3種類の言葉が使われているのですが、それぞれが単語なのか、文の一部なのかはっきりしません。

また、大問五の各小問では主人公のことを「わたし」と呼んだり、<やや>と呼んだりして統一されていません。

その他、問題文そのものに疑問を感じるものもあります。

大問三の⑸にはまとめの文がついていて、②はそこに「ひとつのもの」とあるのですが、洋服選びにおいてどのようなものか本文中から二十六字で抜きだすという問題です。二十六字という指定がありますので、答えは「選んだ以上、どんなことがあっても、取りかえを許さない」しかありません。しかし、まとめの文は空欄を補えば、「両親たちの様子を考慮に入れつつ、慎重にひとつのものを選ぶことを学んだ」となります。学んだのは「私」ですから、「取りかえを許さない」という表現には違和感があります。「洋服選びにおいて両親たちから学んだ姿勢はどのようなものですか」というような設問の文章にするべきではないでしょうか。

大問四の⑶は情報通信端末を介したコミュニケーションにおける「相手からの承認の度合い」について具体的に説明している部分を本文中から書きぬくのですが、これも二十九字という指定があるので答えは見つけられます。「多くのSNSに実装された、人びとの投稿を評価・拡散する機能」です。しかし、「承認の度合い」の説明が「機能」でよいのでしょうか。設問の文を「相手からの承認を可視化したものの例として本文で挙げられている部分」としたほうがよいのではないでしょうか。もっともそうすると、⑹の問題はなくてもよくなるかもしれませんが・・・

設問は毎年、似たような書き方がされているので、多くの過去問に取り組むことである程度慣れることが出来るとは思います。

同校の入試問題の特徴としては慣用句を始めとした語彙力が必要とされている点です。大問二ではことわざの問題が1題、大問三では言葉の意味を問う問題が2題、慣用句の問題が1題、大問四では慣用句の問題が一題、大問五では慣用句の問題が一題出題されています。その他、漢字の書き取りや出題文に難しい言葉も出てきますので、語彙力を高める学習は必須です。

選択肢が用意されている問題が多いのですが、はっきり答えがわかる問題と正確に本文の内容が読み取れていないと答えられない問題が混在しています。大問五の⑴などは答えを一つに絞りきることが難しいです。そうかと思うと、同じ大問五でも⑺などは一読してすぐに答えがわかります。

また、大問が5つあり、特に小説や物語ではかなりの長文が出ています。問題を解くのに時間がかかってしまうと、全部終わらないうちに時間切れになってしまうかもしれません。日頃から長文の問題に取り組んで、問題文を読むスピードを上げて、解答速度を早める必要があるでしょう。