令和7年度立川国際中等教育学校の適性検査問題を研究してみました。同校はホームページでこの問題を公開しています。2022年度に附属小学校が出来て、都立では唯一の小中高一貫校となっています。まだ、小学校が出来てから3年しか経っていないので、小学校から中等教育学校への持ち上がりはありません。附属の小学校があるというイメージが先行してしまったためか、令和7年度で受験倍率が0.65ポイント減少しています。高校での募集はありません。
本校は、「国際社会に貢献できるリーダーとなるために必要な学業を修め、人格を陶冶する」という教育目標を掲げています。また、東京都教育委員会がグローバル人材育成に係る取り組みの充実を図るためのプログラム「GE-NET20」に指定されています。ホームページを見ると校長先生のご挨拶として以下のように書いてあります。
自分の行動が世界の人々との協働へと発展し、国際社会で活躍し、貢献するリーダーとなることが、本校が目指す人材像であり、その際、コミュニケーションツールとして最も有効であると考えられる英語力を伸ばします。
(立川国際中等教育学校のホームページより)
令和7年度の合格実績を現役だけで見てみると、国立大学が38名(うち東大は6名)、早稲田、慶應、上智、理科大の4校の合計が73名、GMARCHが110名です。平成7年度の卒業生が136名ですから、GMARCH以上でよい結果を出しています。
●報告書と適性検査の評価
入学者の決定には小学校の報告書の評価が影響します。令和7年度立川国際中等教育学校の場合、総合成績は報告書250点 + 適性検査750点=合計1000点 の成績順で判定されてます。報告書の内容は5年生、6年生の2年を3段階の3が20点、2が10点、1が5点で計算しています。
5年生 *9教科×20点満点=180点
6年生 *9教科×20点満点=180点
*9教科とは 国語、算数、理科、社会、音楽、図画工作、家庭、体育、外国語 のことです。
報告書は2年間合計の360点を250点で換算するので、報告書の成績は合計点数に250/360を掛けて算出することになります。
適性検査については以下の通りです。
【適性検査I】
100点満点を250点で換算
【適性検査II】
100点満点を500点で換算
この適性検査ですが、東京都立の中高一貫校では、東京都の共同作成問題と、学校で独自に作っている問題を組み合わせています。2025年の立川国際中等教育学校の場合、適性検査Iは独自の問題で、適性検査IIは共同作成問題を利用しています。同じ都立の中高一貫校でも学校によって、共同作成問題の利用の仕方は異なります。
令和7年度の立川国際中等教育学校の適性検査Iは国語分野からの出題で、IIの大問1は算数的分野、大問2は社会的分野、大問3は理科的分野です。適性検査IIについてはイメージを掴みやすいように教科ごとに整理しましたが、教科横断型の適性検査なので、複数の教科の学習要素を含んでいます。以下に詳しく見ていきましょう。
●適性検査Iについて
同校のホームページに、出題方針は「文章の内容を的確に読み取ったり、自分の考えを論理的かつ適切に表現したりする力をみる。」とあります。
適性検査Ⅰでは平松正顕の「嘘みたいな宇宙の話を大学の先生に解説してもらいました。」という解説文を題材にしています。
[問題1]は出題文に「天文学者たちにとってラッキーでした」とありますが、筆者はその理由についてどう述べているか60字以上70字以内で説明するというものです。
この問題はそんなに難しくありません。該当箇所の直前直後にその理由が書いてありますのでほとんどそのままつなぎ合わせるだけで解答が作成できます。
[問題2]は「周囲の銀河の分布まで考えに入れてみると、天の川銀河はかなり特殊なようです」とありますが、筆者は天の川銀河のどのようなところが特殊だと述べているか、60字以上、80字以内で説明します。
この部分はなかなか理解しにくく、銀河だけでも十分にスケールが大きい話なのに、銀河を含んでいるさらに大きなまとまりまではなかなか想像が及ばないと思います。この出題文に出てくる「ローカル・シート」がイメージできないと答えづらいでしょう。引用箇所の直後からローカル・シートの説明が始まります。そこに「ローカル・シートの中の銀河は速度のばらつきがそれほど大きくありません」とあり、続けて、「これだけでも、ローカル・シートが少し珍しい存在らしいことがわかります」と書かれています。特殊性の説明として外せない要素です。
その後、出題文は宇宙シミュレーションの話しになり、またローカル・シートに戻ります。そしてそこには「私たちがいるローカル・シートの中には<中略>大きな渦巻き銀河が3つも含まれています」と書かれています。そしてその後に「これは超激レアといってよいでしょう」とあります。となるとこれも特殊性として加える必要があります。
[問題3]は作文です。この問で求められていることは2つあります。一つは、出題文の最後の段落に「重要な教訓」とありますが、筆者がどのような姿勢で研究に取り組むのがよいと述べているかを説明すること。もう一つは、筆者が述べているその姿勢を生かして学校生活で起こる課題をどのように解決しようと思うか自分の考えをまとめることです。そして、2つの内容を、段落を分けて400字から460字で記述します。
傍線の「重要な教訓」については、同じ段落に<仮定が間違っていた場合、結論が変わってしまうことがあるかもしれない。先入観を持たないで研究に向きあうことが必要である。>というような内容が書かれています。
1段落目にはこのような内容を書いて、2段落目にその姿勢を学校生活に生かして課題をどのように解決するか自分の考えを書きます。
例えば、国語の授業が苦手だという先入観を持っている生徒がいたとします。なんで国語が苦手なのか考えてみると、授業で扱った文章について、他人の意見や考えを押しつけられている感じがするからなのだということに思いあたります。でも本当にそうなのでしょうか。他の人の考えの中に自分がまだ気づけなかった大事なことが潜んではいないのでしょうか。それに対して自分はこう考えると伝えることが出来たでしょうか。話しをすることで考えをまとめたり、新しいことを発見したりすることだってあるかもしれません。国語に限らず、日常生活においても人がどのように感じ、どのように考えるかを知ることは大事なことです。人の心の動きを学べる国語という教科がおもしろいと思えれば、人と関わることの楽しさがきっと感じられるはずです。
[問題1]と[問題2]は立川国際中等教育学校のホームページに解答例が載っています。
●適性検査IIについて
出題方針は、「資料から情報を読み取り、課題に対して思考・判断する力、論理的に考察・処理する力、的確 に表現する力などをみる。」とあります。
先述した通り、大問1は算数的分野、大問2は社会的分野、大問3は理科的分野で、すべて都立中高一貫校の共同政策問題です。
適性問題IIの解答例は立川国際のホームページには載っていないのですが、他の都立中高一貫校のホームページに解答例が掲載されています。富士高等学校附属中学校や三鷹中等教育学校のホームページをご覧ください。
大問1は2つの問題で構成されています。[問題1]は宝箱の展開図の面積を求める問題です。設問の会話文の中に重要な条件が示してありますので、それを使って問題を解くだけの簡単な問題です。
[問題2]は2種類のブロックを組み合わせてルービックキューブのような正四面体を作る問題です。この問題には図が7つ描かれていますので、その図を見ないと具体的なイメージが掴めないかもしれません。興味のある方は立川国際のホームページにアクセスしてご覧ください。空間認識能力が問われる問題ですが、最終的に上から見た図を書けばよいので、平面図形の組み合わせとして捉えても正四面体を完成できます。この場合、三方向から見た平面図形で組み合わせを確認できます。知能指数を測るテストのような問題です。
大問2はごみの量を減らすための工夫について考える先生と生徒の間で交わされる会話と資料から、どんなことが読み取れるかを問う問題です。
まず、先生と生徒の会話形式で衣服のリユースやリサイクルについて資料から読み取れることが示されています。ここでは製品の消費量のうち、リユースやリサイクルされている割合がどの程度かを表す循環利用率という指標が取り上げられています。ちなみに衣服の循環利用率は36.4%ということが会話の中で明らかになっています。
[問題1]の(1)ではペットボトルか紙のどちらかを選んで循環利用率を求め、衣服の循環利用率と比較してどちらが高いか答えます。ペットボトルは63.8%で紙は70.7%です。どちらも衣服よりかなり高い率で再利用されています。
(2)では(1)で選んだ製品の図と衣服の循環利用の流れを表す図から分かるそれぞれの循環利用の特徴を比較して、共通点と異なる点を説明します。ペットボトルと紙がそれぞれの製品の原材料になることと、衣服が衣服の原材料になることは共通しています。異なるのは衣服にはリユースされるという点です。
会話は進んで、衣服の循環利用率を高めるためにどのようなことができるかについて考えています。出題文には「衣服の購入動機」、「購入した衣服をほとんど着用しなかった理由」、「まだ着られる衣服の処分方法」の3つの資料が提示されます。さらに、循環利用率を高めるために行われている取り組みについて、2人の生徒がそれぞれ2つのカードにまとめています。
[問題2] は生徒の作ったカード1,2のどちらかを選んで、カードに書かれた取り組みによって消費者の意識や行動がどのように変化して循環利用率が高まるのか説明するというものです。会話文の終わりのほうに解答を誘導するようなことが書かれていますのでそれも参考にします。カード1は回収ボックスを利用してリユースやリサイクルを促進するという方法で、カード2は複数の利用者で共有(シェアリング)するという方法です。どちらの方法を取っても着なくなった衣服が捨てられることが少なくなります。
大問3はシャボン玉の実験の問題です。特に科学的な知識を必要としない問題です。
大きなシャボン玉を作るためにはどのような液を作ればよいのか試してみる実験です。砂糖と水の割合を変えて用意した10gの液体と水だけ10gを用意して、同量の洗剤を入れて空気入れで膨らませます。割れるまで何回押しきることができるか回数を数えます。実験1では洗剤を20滴入れ、実験2では40滴入れます。この結果、砂糖を4g以上入れるとあまり変わらなくなるのですが、砂糖を入れたほうが大きなシャボン玉ができることがわかります。洗剤も20滴より40滴入れた方が大きく膨らみます。
[問題1]は洗剤を20滴入れたときでも40滴入れたときでも、水10グラムに洗剤を入れたときに比べて体積が2倍以上のシャボン玉を作ることができたのが何gの砂糖を入れた液体か答えます。空気入れの中の空気が押し込まれることによってシャボン玉の体積となります。洗剤20滴では砂糖4g、5g、6gのときに2倍になり、洗剤40滴では砂糖4gと5gのときです。ですので、答えは4gと5gのときです。
実験3では長方形の枠を洗剤の入った水に浸して平らなまくを作ります。このまくがやぶれるまでの時間を長くするにはどうしたらいいか考えます。手順3では長方形の短い辺が地面に平行で、長い辺が垂直になるように固定します。手順4では短い辺が地面に垂直で長い辺が地面に平行になるように固定します。両方の手順でわくを固定してからやぶれるまでの時間をはかります。
わくを固定してから15秒後のまくの様子が図6に示されていて、まくの下側に液体がたまっていたというコメントがつけられています。また、実験3終了後の先生と生徒の会話で先生がまくがやぶれるのはまくの一部の厚さがだんだんうすくなるからと説明しています。そこで実験4ではわくを固定してから15秒後に枠の上下を反対にして再び固定して、まくがやぶれるまでの時間をはかります。
結果は手順3でも手順4でも途中で上下を逆にするとまくが破れるまでの時間が長くなります。[問題2]ではまくの厚さが薄くなっていく理由と、わくの上下を逆にするとまくが長持ちする理由を問われています。まくの厚さが薄くなっていく理由は先生の説明にある通り、まくの一部の厚さがだんだん薄くなっていくからですが、解答にはなぜ薄くなっていくかまで書く必要があるでしょう。わくの上下を逆にするとまくが長持ちする理由は、上になるほうの液体が濃くなるからです。
●論理的思考力を磨く
適性検査I、II、個別の出題方針とは別に、立川国際中等教育学校の適性検査全体の基本方針は以下のようになっています。
(1) 資料の内容を読み取り、その中から必要な情報を集め、分析する力をみる。
(2) 課題を的確に理解し、論理的に考察・処理する力をみる。
(3) 自己の考えや言葉の意味などを、相手に分かりやすく伝える表現力をみる。
(立川国際中等教育学校のホームページより)
(1)、(2)については特に適性検査Ⅱでみようとしているといえるでしょう。とは言え、適性検査Ⅱで扱われている資料には会話形式でかなり詳しい説明がついていますし、大問3の実験の手順もひじょうに丁寧です。学校で学習していることが理解できていれば、これを読んで読み取れないということはまずないと思います。ただ、どう答えればいいのかわからないということはあると思います。そういう意味では、いわゆる「入学試験問題」とは少し異なっている「適性検査」の問題の傾向に慣れておく必要があるでしょう。あまり難しく考えることなく、単純に考察できることだけ書けばよいのです。今回の適性検査Ⅱの大問1の数学的な問題などはやさしいので必ず得点しておく必要があります。
適性検査Ⅰではおもに基本方針の(3)を見るのだと思いますが、そもそも出題文そのものが宇宙のとてつもなくスケールの大きな話しなので小学生にはなかなかイメージしにくいでしょう。たとえわからなくても、わからないなりに全体を把握する能力が求められます。かなりの読解力が必要です。適性検査Ⅱにしても同じで、3つの大問には丁寧で詳しい説明がなされていますので、説明する会話文の内容が読み取れれば問題なく解答できます。適性検査Ⅰではさらに「自己の考えや言葉の意味などを、相手に分かりやすく伝える表現力」が求められます。自分の考えをわかりやすく書き記す技術が身についていないと太刀打ちできません。
令和7年度の立川国際中等教育学校の適性検査問題を見て痛切に感じるのは、読解力と表現力を鍛えることの大切さです。それも単に読み取る、記述する技術を身につけるというだけでなく、論理的な思考力に裏打ちされた内容把握と表現でなくてはなりません。問題の中で何を答えることが求められているのか、課題を解決するためにどういう道筋を通ればよいのか、日頃からよく考えて取り組むことが大切です。