前回に引き続き今回は、2024年2月3日に行われた桐朋中学校の2回目の国語の入学試験問題について研究しました。
●登場人物の心の動きを深く理解していないと答えられない問題も
大問一は本田有明の物語「願いがかなうふしぎな日記 夢に羽ばたく夏休み」からです。
問一は鉄棒の授業で手をすべらせて失敗し、「スベルンジャー」と言われて「イラッとした」光平だが、すぐに考え直すことができたのはなぜか説明する問題です。実現したい目標を日記に書いたら目標を達成できたとあり、努力すれば願いがかなうとあるのでそのことを書けばよいでしょう。
問二は空欄補充で選択肢が用意されています。難しくない問題なので解説は必要ないと思います。
問三は傍線②に「あの山下くんが?と首をかしげるくらいに。」とありますが、「ぼく」が意外に思った理由を説明します。優等生の田中さんの横で緊張している様子だったのが、田中さんに勉強を教えてもらったりするようになって、まじめに勉強に取り組むようになったからです。
問四は設問の意味がわかりにくいので、何が問われているのかを正確にとらえる必要があります。求められているのは山下くんが山下くん自身の心境に変化があったことに気がついた様子を描写した一文を本文の中から探すことです。この問題は傍線部③の「やっぱりなにか、『心境の変化』があったのだろう」という部分について出題されています。「心境の変化」にカギ括弧がつけられていることが重要です。「ぼく」と山下くんの一連の会話の冒頭で、「ぼく」は山下くんに「最近なにか、心境の変化があったの?」と尋ねています。山下くんは「別にないよ。」と答えた後、しばらくしてから「『ゆううつ』って言葉を、漢字で書けるようになった」と言います。しかも、田中さんに覚えろと言われて覚えたというのです。となれば、心境の変化はなかったとはいったものの、人に勧められるままに難しい漢字を覚えるに至る気持ちに変化があったということになります。
作問者としてはこの時の「ぼく」と山下くんの心に中の動きを受験生が読み取れているか知りたかったものと思われます。深く理解していないと答えられないでしょう。
問五は心境の変化に続く会話で、山下くんが「ぼく」=光平に影響を受けたと告げるのに対して、「ぼく」が「おだててくれなくてもいいよ。」と返すくだりについてです。さらに山下くんは「おまえの日記に影響を受けた」と言うのですが、この会話の流れに「ぼく」と「山下くんのどのような関係が表れているか選択肢から選びます。
選択肢を一つずつ読んでいけばふさわしいものがどれかはすぐわかりますので解説はいたしません。
問六は傍線部⑥の「ぼくはあいまいにうなずいた」理由を選択肢から選びます。この問題の選択肢も一つずつ見ていくとふさわしいものとふさわしくないものがはっきりとわかりますので解説は加えません。
問七は「弱気そうだった山下くんの顔にも、明るさがもどった」のはなぜか自分の言葉で説明する問題です。
・山下くんは光平が日記に書いて泳げるようになったことにならって、日記を書き始めたが苦戦している。
・山下くんが提案して、日を決めてお互いの日記を見せ合うことに決めた。
・日記を書き続けられるか不安だったが、目標を実現するために日記を書き続けることができると思えるようになった。
上の3つの内容をまとめて記述すれば減点されることはないでしょう。
問八は傍線部⑧「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」についてです。鴨長明の有名な「方丈記」の冒頭の一節ですが、知らなくても答えられます。問題はこの場面で「ぼく」(=光平)の頭にこの言葉が浮かんだ理由を選択肢の中から選びます。
傍線⑧をそのまま読んでも、川は絶えることなく流れてゆき、水は留まることなく新しい水に変わっていくといったふうに理解できます。三年生のとき、川にリコーダーを落としたことがある。その頃とは違って目標を定めて努力をすれば、できないことでも必ずできるようになるということを自分は学んだ。人は成長するという思いがあるのでしょう。そういった内容を踏まえて選択肢を選びます。
問九は漢字の書き取りです。
●出題文の内容を正しく読み取って詳しく説明する
大問二は浅田次郎のエッセイ「初めに言葉ありき」です。
問一は漢字書き取りです。
問二は傍線部①に「性格が不器用である」とありますが、どういう性格について言っているのか選択肢の中から選びます。
次の段落に例を挙げて書かれているのであまり悩むことはないと思います。
問三はⅠ~Ⅳの4つの空欄を埋めることばを選択肢の中から選びます。ここでは同じ選択肢は一度しか選べないという条件がついていますが、それによってかえって簡単になっています。
問四は傍線部②に「『娯楽』と『教養の獲得』が理屈抜きに一致するという、文化社会の理想型である」とありますが、筆者はどのような点を「理想」的であると考えているのか選択肢から選びます。
傍線部②の前の部分に理由が書いてあります。「本でも読むほかには時間の潰しようがなかった」というのは、テレビもパソコンも携帯電話もなくて、文字通り時間を潰すためには読書しかなかったということです。
アにあるように「自由な時間の多い若いうちに」という意味ではないでしょう。イにあるようにテレビやパソコンが不純な娯楽で、読書によって純粋で質の高い教養を身につけられるということまでは言っていないようです。ウにあるように教養の獲得は本来とても難しいとは言っていません。エにあるように空いた時間の過ごし方として本を読むということなのですが、「仕方なく本を読むことも多い」とあるために違っていると思う人もいるかもしれません。しかし、「本でも読むほかには時間の潰しようがなかった」というのはそういうことなのです。受け取り方によってはどの選択肢も間違っていなさそうで迷うかもしれません。
問五は傍線部③に「サルが大量殺戮兵器を保有することになるのではなかろうか」とありますが、筆者のどのような考え方を表しているか説明します。解答用紙には100字分に相当するようなスペースが用意されているので詳しく書く必要があります。
科学の急速な進歩によって活字離れが進むと、科学を安全に利用するという知性を育むことができなくなり、大量殺戮兵器が使用されれば、人類の絶滅につながる恐れがあるという考えです。
問六は傍線部④では「旅客機の中がそうした社会の雛形である」と書かれていますが、人々は旅客機の中でどのように過ごすようになったか説明します。この問題の解答用紙にも100字分に相当するようなスペースが用意されているので詳しく書く必要があります。
昔は飛行機の中では本を読むほかは時間の潰しようがなかったが、今では科学の成果として飛行機内で提供されるようになったさまざまなサービスの中から自分の好むものを選択して、物事を深く考えることもなく気楽に過ごすようになったことです。
問七は傍線部⑤に「サルをヒトに変えた言葉の尊厳を、またひとつ護ったと感ずる」とありますが、筆者のどのような気持ちを表しているか、選択肢の中から選びます。
文学賞の選考委員としての責任を言っているのは間違いないですが、傍線部⑤に続く文に「言(ことば)は神」、「人は言葉を失えば、殺し合うほかはない」とありますので、単にすべて読み終えればいいという話ではないことがわかります。アの「人間が大切に繋いできた言葉を次の時代に受け渡す仕事ができたという誇らしい気持ち」がふさわしいでしょう
●記述問題で詳しい説明ができるような力を身につけておく
解答用紙に用意されスペースを見ると、1回目の入学試験問題同様、記述問題で解答に必要とされる文章の量は100字程度と多いほうです。何を書けばいいかは見当がつくと思うのですが、かなり詳しく書き込むということになると戸惑う人も多いかと思います。丁寧に記述できる能力を磨いておくことが大切です。
これに対して選択肢が用意されている問題は、1回目の試験問題同様、簡単なものが多いのですが、大問一の問八や大問二の問四のように受験生が悩みそうなものもあります。出題文の内容を正しく理解しているかが問われます。
文章構成力、読解力を高められるような問題を選んで取り組むことで、日頃から力をつけることをお勧めします。