2023年2月に行われた中央大学附属中学の国語の入学試験問題について研究しました。今回はその1回目です。
当校からはほとんど全員が附属高校へ進んでいるようで、附属高校からは2023年、83%の生徒が中央大学へ進学しています。中央大学だけでなく、他大学へも進学しています。
入試科目は、国語、算数、理科、社会の4科目で、国語、算数がそれぞれ100点満点、理科、社会がそれぞれ60点満点です。
●問題の構成
例年、長文読解問題が2題という構成は変わりません。1題が論説でもう1題が小説という組み合わせが多いようです。2023年の長文の種類は1回目、2回目の試験問題ともに1題が論説、もう1題が小説です。題材となっている文章の内容を正しく理解しているかを問う出題が多いです。
●文中で言い換えられている言葉を見つけ出そう
2023年の1回目の大問一は大平健の論説「やさしさの精神病理」からの出題です。
問2は文中にある「頭にもやさしさが求められているのです」の意味を問われています。選択肢の(ア)と(エ)はこの文の意味とは逆の説明をしています。(イ)には「アマチュアの書き手が趣味でつくったような説明書」とありますが、そこまでは言っていないことは明らかです。
問3の選択肢の(イ)はアッシー君、ミツグ君のことを言っていますね。問題になっている「皮肉ではありません」は言葉通り素直にそう思っているということであって、(ウ)のように言葉の裏側はありません。からかう気持ちも含まれていません。(ア)のように「お互いに本音を言うことの出来ないうわべだけの関係性」を感じさせるようなところもありません。
問4は筆者が高校生の言葉に虚をつかれる思いがしたのはなぜかという問題です。選択肢の(ウ)はまったく違いますし、(エ)について筆者が大きなショックを受けたとまでは考えられません。(ア)にあるように結論が出なかったわけではありません。寝たふりをしたのは、「私たちのやさしさ分かんない大人」とのいわば余計な軋轢を避けるためというべきでしょうか。
問6は「礼儀の表し方の問題なのではないか」というのはどういうことかという問題です。(イ)のように筆者が「本音でぶつかることこそ真の礼儀だ」と思っていることを表す記述はありません。(ウ)にあるように「些細なミスの怖さを知る上司の忠告」などという具体的な内容は書かれていません。(エ)が少し迷いますが、礼儀や配慮という言葉はあっても「敬意に欠ける」というのとは違うでしょう。
問8は「僕の前に坐る女性は素直そうで、まるでふてぶてしさとは無縁な感じ」なのはどうしてかという問題です。選択肢の(イ)は「自分を許せないと思っている」とありますが、「反省する気にならない」と言っているのだから違いますね。(ウ)は「朝帰りを悪いことだと思っていない」とありますが、「『悪かったなあ』なんて気持ち、ふっとんじゃいます」と言っているのですから「悪いことだと思っていない」というのは言い過ぎでしょう。(エ)も同様です。「親や筆者の反応を気にせず平然と構えて」いるのとは違いますよね。
問12は本文全体をまとめる内容で合致するものを2つ選びます。(ア)にあるように若者たちが大人に真剣に叱ってもらえないという物足りなさを感じているとはどこにも書いてありません。(イ)のように若者たちが自分たちの世代に行きわたるやさしさのあり方をよいものだと信じていないのかどうかも触れられていません。(ウ)では家族関係すら希薄になってしまっているとありますが出題文にはありません。(オ)にあるように筆者が患者のことを遊び半分で来ているなどとは思っていませんし、したがって不愉快に感じることもありません。
ここまでの6つの小問すべてに選択肢を用意してあって、出題文の内容を正確に読み取れているかどうかを問われています。
問10は本文から200字程度の文章を切り取って、4つに分けてあるので、それらを意味が通るように並べ替えるという問題です。 (ア)はいきなり「その事情ゆえに若者たちは」から始まりますので、この前に若者の事情について触れた文章があるはずです。と見ると、(イ)に「彼らの言う理屈以上の事情がなにかありそうです。」と書かれています。(イ)が(ア)の前に来そうです。この(イ)と(ア)で次第に興味を持ち始め、(ウ)で知りたいと思っているわけですから、(ウ)で締めくくると次につながりそうです。さらには空欄の前までで筆者は“やさしさ”とは何なのか考えこんでしまいましたと書いていますので、それに続く導入部分は納得できないと強い言葉で言っている(エ)が相応しいでしょう。なかなか手強い問題ですが、「“やさしさ”の文法」という言葉は、どこがどうねじれているかということだと気づけば(ウ)が最後に来るのが不自然ではないことに思い至ります。
この出題文では”やさしさ“とは何なのかについて語られています。様々な例を挙げながらやさしさの意味が変わってきているようだと説明しています。ただ、問11のようにやさしさとは本来、相手への配慮や思いやりのことであるはずだというようにまとめて一言では書いてありません。したがって、この内容で問題を出題しようとすると選択式であろうと、記述式であろうと受験生には非常に難しい問題になってしまいます。そこで、出題者の捉え方を文章にして出題したものと想像されます。出典になっている「やさしさの精神病理」を通して読むとよくわかる説明です。出典の一部分しか掲載できないという入試問題の限界を補うための手法と言えそうです。
●選択肢を選ぶにあたっては感情移入を避ける
大問二は津村記久子の「水曜日の山」からの出題です。問1はこの物語の設定を確認する穴埋め問題ですが、この問題がわからないようでは話になりません。問2では(ア)にあるように私が姪のことを感情が抑えられないと見ている節はないです。(イ)や(ウ)のように私が姪の言い方に違和感を覚えたり、反発を感じたりしている様子をうかがわせる記述はありません。問3では(ア)にあるように互いに攻撃し合ってしまうというのは言い過ぎです。(ウ)にあるように生活を共にしているからいら立つということになってしまうとそもそも家族が一緒に暮らすことそのものがストレスになってしまいます。(エ)にあるように自分たちの言い分をむりやり正当化しようとしているわけではないですよね。
問6は学習塾で一緒に働いている二人に対する私の気持ちを説明する文章の穴埋めです。紛らわしい選択肢はありません。問7は「それでも道路のアスファルトは濁った暗い川のように見えた」と言う比喩は私のどのような心情をあらわすかという問題です。この問は消去法で解くことができます。私が敗北を味わう必要はないので(イ)の敗北感はないです。(ウ)の喪失感・恐怖感も感じていませんね。(エ)にある罪悪感を覚えるとしたら塾で働く他の二人のほうです。
問8は「姪が『三時のおやつに』とくれた」スコーンについてです。(ア)にあるようにもうこれ以上食べたくないと思っているという記述はありません。スコーンは朝も昼も食べているし、喉が渇くから飲み物を用意しなければならない。それによってトイレに行く回数も増えるのは困る。そもそも三時のおやつは食べないのだということは書いてあります。朝も昼も食べているからもうこれ以上食べたくないという気持ちになるのは当然です。しかしそうは書いていないのです。選択肢は出題文に書いてあることに絞って慎重に選び出し、自分だったらこう思うといった感情移入は注意深く排除しなければなりません。(ウ)にあるように姪に対するいら立ちを募らせている様子はありません。(エ)にあるように残さないように食べきらないともったいないという思いがあるかは描かれていません。正解はたぶん(イ)なのですが、「その言動には社会人である自分の常識からするとずれる部分」があると思っているかどうかまでは読み取れません。この選択肢でよいのか疑問を持ちました。
問9は「私は驚いて、驚いた勢いで頭を上げて北を向いた」のはなぜかという問題です。(ア)にあるように心のどこかで山のことがずっと気になっていたかどうかは書かれていません。(イ)では「見慣れた山についてわかりきったことを言ってきたことにより」とありますが、その後に続く文章を読むと、むしろ山は変わらずそこにあったにもかかわらず、意識することがなかったことをうかがわせます。(ウ)には「気心の知れた友人に向けたもので」とありますが、どちらかというと知らない人から声を掛けられたことに対する戸惑いの表れでしょう。
問10は他の二人が戻ってきたときにひどいことを言わない自信はないがそのことを自分に許そうというのはどういうことかという問題です。(ア)は堂々と文句を言うことを決めたわけではないので違いますね。(ウ)のように二人に対する腹立たしさに我を忘れそうになるというのは言い過ぎです。(エ)にはどうにかしてその仕事をこなす目途が立ってきたとありますが、出題文には「本当にもう限界を迎えそうになったら」と続きますので、まだこれから限界が来るかもしれないと考えている節があります。
問11は大問一の問11と同様、説明文の穴埋め問題です。問題文には「そう言って、私は黒板に巨大な円を描き、中にもう一つ円を描いた」という文章に対する説明となっていますが、出題文の言いたいことをまとめた形になっています。選択肢に紛らわしいものはないので改めて解説する必要はないでしょう。
●確実に正解にたどり着けるよう練習する
一つ一つ丁寧に見てきましたが、本校の入試問題は決して難しくて歯が立たないというような問題ではありません。表現力を問われるような問題はほとんど出題されていませんので、選択肢を注意深く選び出せば、かなりの高得点が期待できます。
逆に言うと、誰もが高得点を取りやすいと思われるので、ちょっとした間違いでも差がつく可能性があります。問題数が多いですが、短い時間で確実に正解にたどり着けるよう日頃の訓練を怠らないようにしましょう。
※今回は中央大学附属中学の1回目の試験問題を見てみました。次回は2回目の試験について触れてみたいと思います。